汗について

副乳多汗症とは

「副乳多汗症」とは、私か最初に発見し命名した、女性にみられる腋高(ワキの下)多汗の一種です。

乳腺は胸に一対あるのが普通ですが、ワキの下にも存在することがあります(もちろんお乳を出す機能はありませんが)。ところが、この副乳がある人は同時に多汗を伴うことが多いのです。

乳腺組織は、元をたどれば、原始アポクリン腺から発達したものと言われていますから、副乳があると汗が多い、というのも納得できます。

副乳が原因の多汗の場合には、副乳は必要ないものですから、摘出することでかなり汗を減らすことができます。その減汗効果は、アポクリン腺型多汗よりは少ないけれど、エクリン腺型(つまり精神性発汗型)より期待されるケースが多いといえます。 


手掌多汗症とは

体温調節のためにかく汗は、「温熱性発汗」といいます。また辛いものを食ぺたときに額、鼻、唇などに発汗するのは「味覚性発汗」といいます。緊張や興奮したときにかく汗を「精神性発汗」といい、手のひらや足の裏などに汗をかきます。

実際のところ、手のひらや足の裏に異常な量の汗をかき、日常生活にまで支障が出て悩んでいる方はたくさんいます。私のクリニックを訪ねてくる精神性発汗の患者さんの中でいちばん多いのが、手のひらに汗をかく手掌多汗症の方なのです。

原始時代、人間はヤリを持って動物を追いかけたり、敵からすばやく逃げるというような生活を送っていました。その際、手のひらや足の裏が乾燥していると強く物を握れなかったり走りにくかったりするので、手のひらや足の裏の汗は必暖なものでした。適度な湿り気が滑り止めの役目をしていたのです。現代でも、お札を数えるときに指をなめたり、野球選手が手のひらにツバをつけてからバットを握るのを目にしたりします。

ですから、手に汗をかくことなんて当たり前!ぐらいな気持ちで開き直ることができれば、手掌多汗症にはならないのです。しかし、そうは言っても人それぞれの性格もあり、簡単にはいきません。

悩んでいる方にとって、手のひらの汗は恐怖です。これは対人恐怖、赤面恐怖などと同じく神経症の一種といえます。ですから、手掌多汗症精神性発汗)の治療は、「足がクサイ人は心が優しい」のところで述べた、神経症の治療に準ずるものとなります。


発汗の仕組み

サウナ風呂に入ると、当然皮膚の温度も上がります。

皮膚には温度の上昇をキャッチする受容器があって、そこから知覚神経を通じて一気に情報が脳に伝わります。

脳では体温の調節を担当する視床下部の中枢が「暑いよ」という皮膚のコールを待ち受けていて、了解とばかりに「汗をかけ」という指令を出します。

その命令は交感神経をすばやく駆け抜け、全身のエクリン腺まで伝達されます。

すると神経の未端から、アセチルコリンという伝達物質が出動を要請されます。アセチルコリンはエクリン腺の細胞のレセプターが大好きで、よいこらと勝手に入り込みます。突然の来訪者の訪問にエクリン腺は驚いて動き出します。

まずは近くの血管から血漿をくみ取り始めます。ただし血漿には貴重な成分がいっぱいあって、いくらなんでもそのまま汗には出せません。

そこで大事な成分のほとんどは汗腺の導管から血管に返します。これが「再吸収」という汗腺の大切な機能なのです。

いったん外に出た汗の水分は自由の身となり、大気中に蒸発して、そのついでに「気化熱」を皮膚から奪い、体温を下げてくれるのです。

このような「良い汗」をかいたあなたは、スッキリしてサウナの後のおいしいジュースが飲めるのです。 


エクリン腺の汗の成分

体臭について悩む人のはとんどが、汗についても悩んでいます。汗がいやな体臭の根源であると考えている人も多いのです。

エクリン腺から出た汗の成分は、なめてみればわかるようにはとんどが塩分(塩化ナトリウム)です。

ところが調ぺてみるとそれだけではありません。カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、重炭酸、亜鉛など、体に必変なミネラルまで含まれています。

実は汗は尿のような排出物ではなく、血漿の成分が含まれているのです。

つまり、体温調節という役割が人間にとってあまりにも重要なので、本当ならもったいなくて出したくない大切な血漿の成分が含まれた汗を、泣く泣くかいているのです。いわば汗は汗腺の涙のようなものです。

そう考えると、汗は臭いから嫌いだなんていえませんよね。 


日本人の汗腺が危ない

汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺とがあり、ふだん私たちが「汗をかく」というときはエクリン腺の汗のことを指します。エクリン腺は、真皮の深層部、または皮下組織の上層部に根元があって、その根元はちょうど毛糸玉のようにグルグル巻いた固まりになっていて、そこから皮膚の表面に向かって、まっすぐに伸びています。

エクリン腺は小粒で体全体に約400~500万もあるといわれてます。 1平方cmあたり300個近くあることになります。なぜ小さい汗腺が数多く分布しているのかというと、大粒の汗を1度に出すよりも小粒の汗を幅広く出す方が蒸発しやすく、限られた量の汗で体温を効率よく下げられるからなのです。さらに、汗腺は皮膚のシワが交差したところに開口していますが、これは出た汗がすばやく皮膚表面に広がるように、という心配りなのです。


なぜ人間の体温は37度なのか?

あなたが風邪をひいて体温が平熱より1度上がり、38度になったとしましょう。あなたはかろうじて動くことはできても、仕事や勉強に集中できなくなるでしょう。

さらにもう1度上がって39度になれば、もう頭はボーツとして考えることさえできません。健康なときの37度からたった2度上がっただけでこのありさまです。

人間は外の温度に関係なく、いつも一定の体温を保つ恒温助物です。実は恒温動物の仲間の中でも、この体温調節の仕組みを最も必要としているのが我々人間なのです。

そのわけは、人間の脳にあります。人間は中枢神経系である脳を発達させながら進化してきました。この中枢神経系は、体のどこよりも盛んに代謝が行われているところです。つまり体温の変化に最も敏感なのです。

言い換えれば、体温の変わるとき、とりわけ上昇するときに最も弱い場所といえるでしょう。その繊細な中枢神経を守るためには、人間は他のどの動物よりも体温を一定にしなければならないのです。脳を発達させてしまった宿命です。

そして、その脳の中で様々な酵素が最も代謝を行いやすい最適の温度がたまたま37度であったのです。37度線―これこそ人類が進化の道を進むか、類人狼にとどまるかの境界線だったのです。


汗の役割について

でも、私たちは食事のたびに死んだりしません。なぜでしょう?

それは私たちの体が3つの方法で熱を外に放出しているからです。 

まず、体温より気温が低いときは、白然と熱が体外に出ていきます。これを「放射」といいます。

2番目に、人間が日常的に動いたり、物に触ったりする中で、体をとりまく空気や物に体熱が伝わっていきます。これを「伝導・対流」といいます。

そして3番目が「蒸発」です。汗が水分として皮膚から蒸発するときに、気化熱を奪うかたちで、体の熱を取り除いてくれるのです。


汗の恩恵について

人間は、生きるためにエネルギーが必要です。

そのためには食ぺなければなりません。食ぺた物を体の中にある「酵素」が栄養素に分解したり、逆にそれらを合成したり、そんなやりくり算段でエネルギーをまかなっているのです。

このやりくりを「代謝」といいます。

 


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