無駄な手術を避けて、患者さんが自己臭症であることを自覚するにはどうしたらいいのでしょう。

私は、自分だけで思い込んでいる軽い体臭の患者さんには「試験切開」という方法をとることもあります。

ワキガの原因は、腋窩皮下のアポクリン腺や皮脂腺が異常に多いことにあります。このことをよく説明した上で、局所麻酔をし、腋窩の皮膚をシワに沿って約5ミリ程度切開を加えて、皮下のアポクリン腺量を調べます。そして、本人にも確認してもらいます。実際に手術で摘出したワキガの患者さんのアポクリン腺の量と比較することで、アポクリン腺が少なく、ワキガではないことを自覚してもらうようにします。

言葉では十分説得できなくても、このような確実な証拠を見せられると、患者さんも意外と納得するものです。 

体臭が気になって来院する患者さんの中には、診察室に入るなり強烈なニオイを発するワキガ体質の人から、鼻をいくらワキの下に近づけても一向ににおわない人まで、実にバラエティに富んでいます。

本当のワキガ体質者は、

  1. 耳アカが軟らかい。
  2. ワキ毛が比較的濃い。外耳道の毛も比較的濃い。
  3. 下着が黄染する。
  4. 遺伝傾向がある。

といった明らかな傾向があります。

我々医者の立場からみれば、本当のワキガ体質者は非常に治療しやすく、精神的にも楽なものですっなぜなら、外科的療法によって、完全に治癒させることができるからです。

ニオイが強ければそれだけいっそう、術前と術後の変化が大きく、患者さんもニオイの消失が自覚的に認識でき、喜びも大きく、医師、患者の双方とも手術の結果に満足できるものです。 

汗の量は、人によって異なり、労働やその他の生活条件によっても、季節によっても違ってきます。 しかし、これらの条件とは関わりなく、ひどい汗かきの人がいます。いわゆる多汗症といわれるものです。

多汗症には、全身に大量の汗をかくタイプと、体の一部分に限って汗が多い局所性多汗症のタイプがあります。 全身性多汗症は、しばしば結核、急性リウマチ、バセドー病、女性の生殖器障害などにみられます。ただし、現実には、これらの病気とは関係なく、ただひたすら汗が出るという場合があります。一般的な全身性多汗症については、その原因もわかっていないのが現状ですし、病気としてもとり扱われていません。

部分的に汗をかく局所性多汗症は、全身性のそれとはちょっと事情が異なってきます。心身に何らかの異常が認められる時にみられます。

汗をかきやすい部所は、頭髪部、額、こめかみ、鼻、首、ワキの下、手のひら、手の背側と指の間、陰部、足の背側と指の間、足の裏などです。

こう列挙してみますと、局所性多汗症は、二つのタイプに分けられることがわかります。

一方は、手のひらや足の裏などアポクリン腺が存在せず、エクリン腺の多い部所であり、もう一つは、頭、ワキの下、陰部などのアポクリン腺の多い部所です。

手のひらの多汗は、手掌多汗症(足の裏の場合は足掌多汗症)と呼ばれています。俗に「手に汗を揺る」といいますが、その言葉どおり手に汗を握るような状況、すなわち精神的な興奮や緊張によって起こります。興奮が一段と高まると、手足だけではなく、顔やワキの下、さらには全身に汗をかくようになります。

手掌多汗症の人の多くは神経質で、いったん多汗の症状が始まると、それを気にしてさらに分泌が増大する、ということを繰り返します。

しかし、ニオイという点からすると、エクリン腺から分泌される汗は、99~9 9.5%が水分で、0.5~1%が食塩を中心に乳酸、尿素などの固形物ですから、よほど不潔にしていない限り、ニオイはしません。

無責任ないい方をすれば、気を大きくもって、汗のことなど気にしないのが最良の薬といえます。

しかし、ワキの下の多汗(腋窩多汗症)は、アポクリン腺からの発汗も多いので、強いニオイ(ワキガ臭)の原因になりやすく、衣類などに色がつきやすくなります。

アポクリン腺から出る汗は、エクリン腺のそれとは異なり、何種かの脂質、中性脂肪、脂肪酸、コレステロール、鉄分、蛍光物質、色素などが多く含まれており、発汗後、分解・変質してニオイを発します。この時、鉄分が重要な働きをすることもわかっています。ワキガのニオイは鉄分のニオイである、といい切る学者もいるほどです。

衣服にしみつく色は、色素、鉄分などであり、洗濯してもなかなか落ちません。これも悩みです。

ワキガとの関係でいえば、ワキガの人は、腋窩多汗症を伴うことが多いようです。だからといって、多汗症の人がすべてワキガかというと、決してそんなことはありません。ワキガは、アポクリン腺から分泌される汗なくしてはありえないからです。

多汗症の人がワキガ体質なのかどうかは、よく耳アカがその判断材料につかわれます。耳の中はアポクリン腺が多く分布しているので、アポクリン腺からの汗の量が多ければ、耳アカはいつもジュクジュクして湿っています。耳アカがいつも軟らかく湿っている人は、いわゆるワキガ体質とみてよいでしょう。

私の治療体験によれば、局部的な多汗症は、次のように、汗をかく部位によって、体の不調がどこにあるかを教えてくれているように感じています。もちろん、確定的なものではないのですが、多分にその傾向はあります。

  1. 頭部…肝機能障害、くる病
  2. 首から上…虚弱体質、体力不足、神経過敏
  3. 手掌・足掌…神経過敏、神経疲労、慢性便秘、高熱性疾患、蓄膿症、リウマチなど
  4. 背…精神不安
     

寝汗は文字どおり、寝ている間にかく汗のことです。とはいっても、人間は就眠時には大量の汗をかきます。もしそれが、サラサラとした運動後にかくような汗なら問題はないのですが、粘つこい汗が頭部、首から胸の周り、腰から股の周辺、膝から足へかけて余計に出るようだと注意する必要があります。こういう汗を、一般的な寝汗とは区別して盗汗と呼んでいます。

盗汗は、虚弱な人や不眠、口の渇き、精神不安をもっている人に多く、結核を始めとする消耗性疾忠をもっている人にも多くみられます。 

脂汗は、脂肪体質や化膿性体質の人がかきやすい汗です。それについては何ら異常ではないのですが、強度の便秘、痛みや高熱に耐えている時などにも脂汗をかくことがあります。

脂肪体質の人は、額、鼻、あごなど、顔を中心に常時脂ぎっているもので、急に吹き出るような脂汗はかきません。急激な脂汗の発汗、胸部や手のひら、足の裏などに脂汗をかくようだと、要注意の信号とみてよいでしょう。

冷汗についても、脂汗と似たような症状の時に出ることがあります。 

多汗症とは逆に汗をかかない、いわゆる無汗症は比較的体力のある人で、風邪のひき始め、寝冷え、冷たいものの飲食過多などによって、一時的に起こることがあります。

もちろん、これらの要因がなくなれば治ってしまうのですが、発汗しないと熱もとれにくく、他の病気の引き金になるので、できるだけ発汗を促すようにします。

一方、こうした一時的な無汗症ではなく、常時無汗症状を訴える人がいます。私の診療経験によれば、常時無汗の人は、強い自律神経失調症状があり、ノイローゼを始めとする精神病疾患をもっている場合が多いようです。

ミネラルを喪失する汗は太りやすい

汗には「良い汗と悪い汗」があることをお話ししましたが、汗を「太る汗とやせる汗」に分類することもできます。結論を言えば、良い汗とは「やせる汗」であり、悪い汗とは「太る汗」なのです。

ダイエットの目的は、体の貯蔵脂肪をミトコンドリアで「燃焼」させてニ酸化炭素と水に分解させることです。それにより、初めて脂肪の蓄積量の低下、つまり[減量]が可能となるのです。

「燃焼」というのは「代謝」ということです。いくら食事制限をしても、それ以上に代謝が低下してしまうなら脂肪は燃焼されず、ダイエットにはなりません。食事制限によるダイエットは、必ず「もうそれ以上は無理」という壁につきあたりますが、それは代謝の方がダウンして「もうこれ以上脂
肪の燃焼は無理ですよ」という体のサインなのです。

ですから、正しいダイエットとは、体の代謝を高めながら(落とさないだけでなく)行うものでなければなりません。

基礎代謝を維持し高めるためには、マグネシウムやカルシウム、鉄といった代謝関連のミネラルも必要です。体の中にこれらのミネラルを保持するには、食事から十分摂取することです。しかし体から「喪失させない」ということはもっと大切です。

「エクリン腺の汗の成分」のところでお話ししたように、これらのミネラルが最も失なわれやすいのが汗なのです。

このような貴重なミネラルが特に失われやすい汗のかき方というのがあります。それが「悪い汗」であり、「太る汗」なのです。

逆に言うと「良い汗」とは、あまりミネラルを喪失しないように、必要最低限の量で体温を下げることのできる汗のことです。それは、どのような汗かというと「サラサラ」した「小粒」の汗なのです。

体温の低下は、汗が蒸発した時に気化熱を皮膚から奪うことで可能なのですから、蒸発しやすい汗つまり「小粒でさらり」とした汗をかけばいいのです。

逆に、大粒でタラタラ流れる汗は、蒸発しにくいムダ汗です。しかもそのような大粒の汗には、貴重なミネラルが一緒になって大量にでてくるのです。

体温を下げるたびに、代謝に必要なミネラルを喪失してしまうのですから、代謝力=燃焼力の低下は避けられません。 

積極的に熱いお湯で汗腺を刺激することで、汗腺機能を高め、能動汗腺の数を増加させることも可能です。

①高温手足浴

まず、高温手足浴です。浴槽にかなり熱めのお湯(43~44度くらい、火傷をしないくらい)を少なめにはって、両手(ひじから下)と両足(ひざから下)を10分~15分くらい温めます。この時、浴槽にイスをいれ、前かがみになると効果的です。

これは短期暑熱順化という原理で、四肢は汗腺の予備力が一番多いところですので、能動汗腺を増やし、機能を高めるのには最も効果的なのです。

②微温浴

次は微温浴です。①で入っていた熱めのお湯にぬるいお湯を足して、そのぬるま湯に全身でつかり、リラックスして、高温で高まった交感神経を安定させるのです。この時、お湯に酢をいれるとより効果的です。

③汗の乾燥

お風呂からあがったら、十分水分をタオルで拭いてから、すぐに服を着ずに、そのまま汗を乾燥させます。目にみえない汗が汗腺から出やすくなり、汗腺の機能を高めることがでさます。このとき、リンゴ酢や黒酢、クェン酸を使ったドリンク、ショウガドリンク(すりおろしたショウガに蜂蜜を加えてお湯で溶き、夏場は冷やしておく)で水分補給するとよいでしょう。

以上を5、6月頃から3週間はど続けると汗腺機能が高まり、日を追うごとに良い汗をかけるようになります。 

「夏バテ」とは、夏の暑さからくる体の不調の総称で、体計調節障害、水分の喪失、体液のバランス障害による自律神社系や内分泌系の失調を特徴としています。つまり夏バテは「良い汗」をかけないこと、言い換えれば、汗をたくさんかいたからではなく、体温を有効に調節しない無駄な汗や、体液の大切な成分を喪失するような「悪い汗」をかいていることが主な原因なのです。

汗はかく量だけでなく、質も大切なのです。ですから、汗をかくことを嫌い、夏になると冷房の部屋ばかりに閉じこもっていると、汗腺機能、特にミネラルなどの再吸収の機能が退化し、体温と体液の恒常性を保つことができず、体の変調をきたしてしまうのです。

悩んでいる方には怒られてしまうかもしれませんが、汗をどんどんかいて欲しいと思います。理由は2つあります。

ひとつは、良い汗をたくさんかいてほしいということ。

良い汗とはサラサラで肌の上ですぐ乾き、体の貴重な成分が汗に含まれていないため水に近く、体温をきちんと調節し、てくれる汗です。悪い汗とは、その逆にネバネバで乾きにくく、たくさん出ているのに体温調節もせず、体の貴重な成分を体外へ出してしまうものです。

現代人は、冷房や運動不足などのせいで、あまり汗をかかなくなっています。このような環境にいると、汗腺はどんどん使われなくなって衰えていきます。